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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『星の子』今村夏子(著)
第39回野間文芸新人賞受賞作であり、本屋大賞ノミネート作品でもある『星の子』。
今村さんの独特の感性で描かれる不気味な世界観が好きで、『あひる』に続き今作も読んでみました。
難しいテーマなので考えさせられる部分はたくさんありましたが、それでも読み心地はさらっとしているので、一気に読めます。
シンプルな文章で読みやすいのに、うまく表現することが難しい物語。
2020年10月に、芦田愛菜さん主演で映画化もされるようです。
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本の概要(あらすじ)
「・・・この場所はね、一時間に二十個の流れ星が肉眼で見えるっていわれてるのよ」
生まれたときから病弱だったちひろ。
娘を心から愛する両親は、ちひろを救いたい一心で、あやしい宗教にのめり込んでいく。
小さい頃はそんな両親を無条件に受け入れていたが、成長するにつれて疑問を感じはじめるちひろ。
愛にあふれた幸せな家族のかたちは、少しずつ歪んでいき・・・。
あなたは大切な人が信じるものを、信じることができますか?
3つの特徴
宗教と家族
何を信じるのも、信じないのも自由。
そんな一言ですませることのできない物語だなと思いました。
病弱な娘を心配し、藁にもすがる思いで宗教にのめり込んでいく両親。
何もわからないまま両親の崇める水を飲み、集会に参加するちひろ。
そんな両親を受け入れられず、家を出てしまった姉。
ひとりっ子という設定ではなく姉妹の設定にしているのが、より残酷さを引き出しているなと思いました。
ちひろは幼さ故に受け入れることができたけど、姉は少し歳上だったからそれができなかった。
自分の力ではあらがえないもので運命が変わってしまった姉妹なのです。
では、自分で選ぶことのできなかったちひろが不幸なのか?というと、そうとも言い切れず。
両親は心からちひろを愛していますし、宗教を通じたあたたかい人との繋がりもうまれています。
学校では友だちが少ないちひろも、集会に行けばたくさんの友だちがいる。
けれどちひろは心のどこかで疑問を感じていて、それが成長するにつれて徐々に膨れ上がっていく。
物語が終盤にむかうにつれ、少しずつ不穏な空気が強くなっていきます。
善意と悪意
人の行為を善意からくるものと捉えるのか、悪意からくるものと捉えるのか。
これは立場によっても受け取り方が変わってくると思います。
ちひろの両親を説得に来る親戚は、決して意地悪な気持ちからではなく、ただ心配しているが故の行動です。
(宗教に入ってからというもの、父は仕事を辞め、引っ越すたびに家は狭くなり、修学旅行のお金も出してもらえないくらい生活環境は悪化しています。)
けれど、本書には明確な悪意が存在していて、それがものすごく強烈で暴力的。
今村さんの作品には、こういった人間のこわさが隠されている気がします。
南先生(ちひろの学校の先生)がちひろに吐いたセリフには、思わず恐怖を感じました。
「・・・あのな、いいか?迷惑なんだよ。その紙とえんぴつ。まずその紙とえんぴつをしまえ。それからその水。机の上のその変な水もしまえ」
「いいな、学校は学びにくるところだ。ラクガキしにくるところでも宗教の勧誘をするところでもない。わかったな。これ以上仲間を巻きこむなよ」
ちひろは宗教の勧誘をしていないし、憧れていた南先生の似顔絵を描いていただけ。
とある出来事からちひろに恥をかかされたと思い込み、みんなの前で嫌がらせかのように吐いたこのセリフ。
この後、「気にすんなよ」と声をかけてくれた隣の席の田所くんや、肉まんを奢ってくれた新村くんの方がよっぽどいい男だと思いました。
信じることの難しさ
本書には、理解できないものを否定するわけでも放置するわけでもなく、全力で理解しようとする人間がひとりだけいます。
それが、春ちゃん(ちひろの友人)の彼氏・戸倉りゅういちくん。
春ちゃんは、教団の研修旅行に戸倉くんを連れてきていました。
嫌がらずに来てくれるだけでも凄いことだなと思いましたが、その後の彼の宣誓には感動すらおぼえました。
「・・・ぼくは、ぼくの好きな人が信じるものを、一緒に信じたいです。・・・それがどんなものなのかまだ全然わからないけど、ここにくればわかるっていうんなら、おれ来年もここにきます。わかるまでおれはここにきま、えー、くることを、おれはおれの好きな人に、約束します」
彼のように堂々と約束できる人って、どのくらいいるのでしょうか?
私は彼のことばに尊敬の念を抱きつつも、どこかで「私にはたぶんできないと」思う自分にも気づいてしまいました。
一緒に信じたいという気持ちはよくわかります。
けれど、それを信じている相手を理解することはできても、自分も一緒に信じるというのはとてもとても難しいことだと思います。
大人になればなるほど難しいのではないかと感じるのは、私だけでしょうか。
友人や恋人。特に、家族。「宗教」というのは、身近な存在であればあるほど、難しい問題になってくるのだなと改めて思いました。
本の感想
この本を読んだ多くの人が考えるであろうこと。
それは、「大切な人が信じるものを理解できるだろうか、そして信じることができるのだろうか」ということ。
これに関してはっきりとした答えが出せる人は多くないのではないでしょうか。
私は何を信仰するのも自由だと思っているし、否定的な気持ちはありませんでしたが、それは他人事としてしか考えていなかったからなのだなと気がつきました。
春ちゃんの彼氏のように理解しようとする人もいれば、ちひろの親戚たちのように遠ざけようとする人もいる。
他人なら「放っておく」という選択もできるけど、家族だとそれが難しい。
本書では一貫してちひろ視点でしか描かれていないので、読者自身で想像する余地がたくさんあります。
家を出た姉はどうなったのか、両親はちひろをどうしたいのか、彼らはこの先どう生きるのかーー?
物語のラストもどう捉えるかは、人それぞれ違うはず。
ハッピーエンドに近いものを感じる人もいると思うし、バットエンドを想像する人もいると思います。
この難しいテーマを映画でどう表現するのか、楽しみです。
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印象に残った言葉(名言)
「私が最後に見たまーちゃんの手は、無数の傷と謎のラクガキに覆われていて、本当の皮膚の色は下に隠れてしまっていた」
「なにかっていうと、すぐにため息つくの。あえ〜っていうため息。すっごくだるそうで、そのため息きいてると、ああこいつはほんとうにだるそうでいいやつだって思うの」
「わたしには、すべてが見慣れた光景だった。それなのに、はじめて見たと思った」
「あやまるなよ・・・。そうだったのか、おれてっきりかっぱかなにかだと思った」
「水をしみこませたタオルをね、頭の上にのせてると、悪い気から守られるの。うちのお父さんとお母さんはそう信じてるんだ」
今村夏子さんの他の作品
【No.2】~ほんわか小説と思いきや、実は・・・!?~ 『あひる』 今村夏子(著)この本の総評
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